本稿は、個人関連情報の第三者提供(個人情報保護法31条)と外部送信規律(電気通信事業法27条の12)を混同せずに運用へ落とし込むための実務ガイドです。まず委託/共同利用/第三者提供をAPPI27条で切り分け、そのうえ...
本稿は、個人関連情報の第三者提供(個人情報保護法31条)と外部送信規律(電気通信事業法27条の12)を混同せずに運用へ落とし込むための実務ガイドです。まず委託/共同利用/第三者提供をAPPI27条で切り分け、そのうえで同意・公表・記録を「いつ・どの粒度で」行うかを運用台帳(監査ログ一体設計)で固定します。B2C、SaaS、広告・EC、自治体サイト、医療機関など多様な現場にそのまま移植できる判定フローとテンプレを収録。ISO規格に基づく同意UI・記録(ISO/IEC 29184、TS 27560)とPIMS運用(ISO/IEC 27701:2025)まで接続します。
■ 核となる区別
個人関連情報(APPI 2条7項):個人情報・仮名加工・匿名加工以外の個人に関する情報(例:閲覧履歴、属性、位置情報)。
委託(27条5項1号):第三者提供に当たらない。受託者の独自突合は禁止。
共同利用(27条5項3号):第三者提供に当たらない。項目・範囲・目的・責任者を公表。
第三者提供(27条1項):原則同意+29・30条の記録義務。**越境(28条)**なら相当措置/同意+継続確認が追加。
外部送信規律(電通法27条の12):第3号事業×情報送信指令通信に該当すれば、通知/公表/同意/オプトアウトのいずれかで事前の確認機会を付与(例外あり)。Cookieに限らず端末識別子等を広く対象。
■ よく躓く論点を一次資料で整理
31条の確認・記録:受領側が個人データとして取得する想定があれば、提供元は同意の有無等を確認し記録(原則3年目安)。
外部送信の対象判定:会社案内だけの静的ページは対象外になり得る一方、ニュース・検索等の第3号事業は対象になり得る。
越境(28条):同意だけでなく同意前情報提供(国名・制度・受領者の措置)と継続確認が要件。
委託≠第三者提供:委託は第三者に当たらないが、目的外利用防止・監督は必須。
■ 台帳とログの“型”
判定ログ:処理名/法的根拠(27/28/31/委託/共同利用/外部送信)/担当/決裁日/見直し期日。
同意ログ:文面・UI版スクショ・撤回導線・Consent Record(ID/スコープ/タイムスタンプ/撤回履歴)。
外部送信公表台帳:タグ/SDKごとの送信項目・送信先・目的・問い合わせ先・更新日。
第三者提供記録:29・30条方式(都度/一括/契約書代替の可否もGLに準拠)。
PIMS連携:ISO/IEC 27701:2025の管理目的に紐づけ、内部監査ルートを固定。
■ すぐ着手できる最小アクション
ページ×タグ/SDK棚卸し(送信先・項目・目的・根拠・第3号事業判定)。
同意UI差し替え(短文例と撤回導線をISO/IEC 29184準拠で常設)。
共同利用の公表更新(項目・範囲・目的・責任者を再点検)。
31条チェックシート(受領側が個人データ取得か/事前同意の有無で自動判定)。
越境の継続確認(国名・制度・受領者の措置、停止SOPを含む)。
■ 失敗パターンの回避
「同意があれば全部OK」→×:越境は継続確認必須、31条は確認・記録が提供元義務。
「外部送信はポップアップだけ」→×:通知/公表/同意/オプトアウトのいずれかで要件充足。
「共同利用なら目的変更自由」→×:取得時目的の範囲内。変更は遅滞なく公表。
■ 目的と価値
苦情・事故の減少、監査時間の短縮、権利行使の円滑化に直結。制度理解を運用台帳に落とし込むことで、過剰防衛にも無警戒にも陥らない“ちょうど良い”コンプライアンスを実現します。一次資料リンク(APPI、電通法、PPC GL、総務省解説、ISO)は本文末に一覧化。現場でそのまま使えるテンプレとチェックリスト付きです。
筆者:伊藤憲和 / Norikazu Ito
※一般情報であり法律相談ではありません。最終判断は自社法務・DPO・顧問弁護士と行ってください。