本稿は「仮名加工情報」と「匿名加工情報」を定義→義務→例外→証跡の順に分解し、迷いがちな実務をそのまま運用に落とせる形で整理した実装ガイドです。結論はシンプル。仮名加工=社内活用の柔軟化(識別×・連絡�...
本稿は「仮名加工情報」と「匿名加工情報」を定義→義務→例外→証跡の順に分解し、迷いがちな実務をそのまま運用に落とせる形で整理した実装ガイドです。結論はシンプル。仮名加工=社内活用の柔軟化(識別×・連絡×・第三者提供原則×)/匿名加工=外部提供可(作成時・提供時の公表と識別禁止がセット)。まず条文と施行規則に足場を置き(APPI 2条5・6項、41〜45条、施行規則31・34・36条)、個人情報保護委員会(PPC)ガイドライン(令和6年12月改正)に完全整合する“再現可能な”運用を提示します。
実務の肝は削除情報等(リンク情報)と台帳×ログ。仮名加工情報は、社内で容易照合できるなら実質的に個人情報として扱われ得るため、識別・連絡禁止の統制(技術/組織)、第三者提供判定、共同利用時の公表を台帳一行で管理。匿名加工情報は、加工記録(規則34準拠)/含まれる情報項目の公表URL/提供時の公表+「匿名加工情報である旨」明示/識別禁止まで揃えて、監査にも外部説明にも耐える状態にします。
本稿には、すぐ差し替え可能な雛形を収録:
仮名加工の社内規程追記例(識別・連絡・第三者提供の統制、削除情報等の鍵分離)
匿名加工の外部提供公表テンプレ(項目・提供方法・明示文)
漏えい時の分岐SOP(削除情報等の有無→法26条報告/通知判定)
台帳列セット(データ種/加工基準/削除情報等/照合可否/公表URL/提供先・明示状況/統制/更新日)
さらに、散在データ(データベース等に該当しない仮名加工情報)、委託・共同利用との境界、適用除外(報道・著述等:法57条)、研究・医療・広告での落とし穴を一次情報で補強。ありがちな誤解――「仮名加工なら第三者提供OK」「匿名加工は作って終わり」「散在なら仮名ルール無関係」――を条文とGLで正します。
最後に、四半期の再識別リスク点検(外部データ流通・アクセス権逸脱・照合可能性のレビュー)と、ISO/IEC 27701:2025/TS 27560:2023に沿った版管理と同意/公表の相互運用を提案。これにより、苦情・事故の減少、監査時間の短縮、誤情報の減衰に直結し、仮名・匿名の線引きが組織の“当たり前”として定着します。一般情報であり法的助言ではありませんが、現場を動かすための実務テンプレ+監査耐性を1冊に凝縮しました。