【FIT2025に参加】駐車時における自動車ハンドルの回転角フィードバックシステムの評価

sugiuralab 0 views 30 slides Oct 09, 2025
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ハンドルの回転角をフィードバックするシステムが車の駐車時の運転に影響を与えているのかを検証する研究です。ハンドル回転角をリアルタイムにフィードバックするシステムを実装し、運転シミュレータを用いて10人の�...


Slide Content

駐車時における自動車ハンドルの 回転角フィードバックシステムの評価 花山 勝吾、山本 匠、杉浦 裕太 2025/9/4 第 24 回情報科学技術フォーラム (FIT2025) 慶應義塾大学

車の駐車には慣れが必要 普段運転している人としていない人で駐車技術の差が顕著 [1][2] 初心者の中にはハンドルの回転角が分からなくなる人も多数存在 ハンドル回転角のフィードバックシステムに焦点を当てた研究は少ない 駐車時にタイヤの向きや予想進路を視覚的に提示するシステムは存在 [3][4] 効果の検証は深くされていない 2 背景 ? [1] 酒井 克博 , “ スマートパーキングアシストの操舵制御 ”, 計測と制御 , Vol.52, No.5 (2013). [2] 関 恵美 , 小野 龍一 , 羽田 久一 , “ 駐車支援のためのステアリング上舵角指示の検討 ”, ヒューマンインタフェース学会論文誌 , Vol.19, No.4 (2017). [3] トヨタ自動車株式会社 , “ 見えにくい後方の安全を支援(パーキングサポート) ”, トヨタ公式サイト , https://toyota.jp/safety/scene/parking/index6.html, (2025 年 5 月 29 日閲覧 ) [4] 本田技研工業株式会社 , “ リアカメラ de あんしんプラス 4”, Honda ACCESS 公式サイト , https://www.honda.co.jp/ACCESS/rear_camera_de_anshin4/, (2025 年 5 月 29 日閲覧 )

目的 ハンドルの回転角をフィードバックするシステムの効果の検証 システムが 駐車 に与える影響の検証 フィードバック手法による違いの検証 提案手法 3 種類 ( 視覚 ・ 聴覚 ・ 振動 ) の回転角 フィードバックシステムの実装 ユーザによる駐車実験 運転シミュレータとフィードバックシステムを使用 3 目的と提案手法 Right, Right, … 視覚フィードバック 聴覚フィードバック 振動フィードバック

4 関連研究:運転中の情報提示システム ( ハンドル非統合 ) 視覚提示や聴覚提示を利用 手首への振動触覚提示 を利用 ドライバーの注意回復 [Lee, 2024] 運転支援 [Tanaka, 2017] ドライバーへの警告 [Lauber, 2014] ドライバーへの警告と誘導 [Ma, 2019] 車両ナビゲーション [Zhu, 2020]

5 関連研究:運転中の情報提示システム ( ハンドル統合 ) 視覚提示を利用 振動・熱触覚提示を利用 ドライバーへの警告 [Mok, 2017] 自動車軌道計画の通知 [Johns, 2017] ドライバーへの情報提示 [Wilfinger, 2013] ハンドルの回転度合支援 [Sucu, 2013] ドライバーへの通知 [Vito, 2020]

6 [3] トヨタ自動車株式会社 , “ 見えにくい後方の安全を支援(パーキングサポート) ”, トヨタ公式サイト , https://toyota.jp/safety/scene/parking/index6.html, (2025 年 5 月 29 日閲覧 ) [4] 本田技研工業株式会社 , “ リアカメラ de あんしんプラス 4”, Honda ACCESS 公式サイト , https://www.honda.co.jp/ACCESS/rear_camera_de_anshin4/, (2025 年 5 月 29 日閲覧 ) 既存の技術 ホンダのリアカメラ [4] トヨタのバックガイドモニター [3] トヨタ 予想進路表示 ホンダ 予想進路表示 色による駐車枠とのずれの提示 タイヤの切れ角 ( 角度 ) 表示

スマートフォンアプリ 回転角メータ タイヤの切れ角提示 背景色の変化 ハンドルが中立位置→緑 回転角が 180 度まで→黄 それ以上→赤 端末の回転に応じてフィードバック UI を動的に回転 UI 内における上方向が常に現実空間に おける上方向と一致 スマートフォンをハンドルに装着 7 実装:視覚フィードバック ( 視覚 FB) 視覚フィードバックシステム

8 実装:聴覚フィードバック ( 聴覚 FB) スマートフォンアプリ ハンドルが中立位置→ “straight” と発声 右回りに回転→ “right” と発声 回転角が大きくなると音量が増加・ピッチが高速化 左回りに回転→ “left” と発声 回転角が大きくなると音量が増加・ピッチが高速化 スマートフォンをハンドルに装着 聴覚フィードバックシステム

9 実装:振動フィードバック ( 振動 FB) レーシングゲーム用ハンドルコントローラ ( logicool G923 [5] ) ハンドル上で振動を提示 ハンドルが中立位置→振動せず 回転角が増加→振動が増加 180 度を超えると振動の大きさは一定 振動フィードバックシステム [5] logicool G. “G923”, https://gaming.logicool.co.jp/ja-jp/products/driving/g923-trueforce-sim-racing-wheel.html, (2024 年 11 月 27 日閲覧 )

logicool G923 [5] レーシングゲーム用ハンドルコントローラ ハンドル / ペダル 自作の Unity 上の運転環境 サイドミラー アラウンドビューモニタ バック時のみ 衝突回数表示 駐車からの経過時間 10 実験環境 Unity 内の運転環境 現実空間の運転環境 [5] logicool G. “G923”, https://gaming.logicool.co.jp/ja-jp/products/driving/g923-trueforce-sim-racing-wheel.html, (2024 年 11 月 27 日閲覧 ) アラウンドビューモニタ サイドミラー 衝突回数 駐車経過時間

並列駐車タスク フィードバック条件 4 種類 ( 視覚 / 聴覚 / 振動 / なし ) 初期位置の異なる駐車パターン 4 種類 4×4 の計 16 回の駐車をランダム順に実施 縦列駐車タスク フィードバック条件 4 種類 ( 視覚 / 聴覚 / 振動 / なし ) 初期位置の異なる駐車パターン 3 種類 4×3 の計 12 回の駐車をランダム順に実施 11 実験概要 参加者数 10 人 ( 男性 8 人、女性 2 人 ) 年齢 平均 22.4 歳 標準偏差 1.075 歳 免許の保持 全員保持 運転頻度 2 人:週 1 ~ 2 回 2 人:月 1 ~ 3 回 3 人:数カ月に 1 回 3 人:それ未満 ① ② ③ ④ ① ② ③ 並列駐車の初期位置パターン 縦列駐車の初期位置パターン 実験参加者情報 ※ 倫理審査の承認のもとにデータを取得

駐車完了の判定条件 自動車が目標の駐車区域内にある場合 →画面左上部に「 Stay! 」と表示 Stay 状態が 5 秒間維持された場合 →画面右上部に「 Goal! 」と表示 駐車完了判定となり、時間計測も停止 この 5 秒間は評価の際の駐車にかかった時間 には含めない ユーザに指示した条件 50 秒以内の駐車 (40 秒経過時に警告 ) 並列駐車タスク: 4 人の乗客が左右から乗り降りできる状態で駐車 縦列駐車タスク:できるだけ左に詰めて平行に駐車 12 実験条件 駐車完了判定 警告

13 実験

視覚 vs. 聴覚 vs. 振動 vs. なし 項目 衝突回数 駐車にかかった時間 [s] ハンドルの総回転角 [°] 駐車位置の横方向座標のずれ 並列駐車:両隣の自動車の中央の横方向座標からのずれ 縦列駐車:左側の縁石に接している状態での横方向座標からのずれ 駐車位置の角度のずれ [°] 並列駐車:両隣の自動車と平行な角度からのずれ 縦列駐車:前後の自動車と平行な角度からのずれ 14 評価指標:定量的指標 並列駐車における 横方向座標・角度のずれ 縦列駐車における 横方向座標・角度のずれ

視覚 vs. 聴覚 vs. 振動 フィードバックに関するアンケート 並列駐車タスク / 縦列駐車タスクそれぞれにおいて 11 項目を 7 段階で評価 15 評価指標:定性的指標 項目 1 7 受容性、信頼度、満足度 非常に低い 非常に高い 気づきやすさ、理解しやすさ、利便性、正しい駐車への貢献度、安全運転への貢献度、不快さ、妨害性、使いたいか 全く感じなかった 非常に感じた アンケート評価項目と評価尺度ラベルの対応

各駐車タスクにおいてユーザごとに結果を算出 衝突回数のみ合計、他は平均 5 つの評価軸ごとに 10 人の実験結果の平均を比較 いずれにおいても有意差は認められなかった 16 結果:定量的指標 実験結果 並列駐車 縦列 駐車

17 結果:定性的指標 項目ごとに 10 人のアンケート結果の平均スコアを比較 縦列駐車におけるアンケート結果 並列駐車におけるアンケート結果

定量的指標 明確な影響は統計的に示せなかった 定性的指標 視覚 FB/ 聴覚 FB がドライバーの心理的側面に影響を与える可能性 振動 FB より有意に良い結果→フィードバック手法として優れている 18 結果のまとめ 並列駐車 縦列 駐車 視覚 FB と聴覚 FB が振動 FB より有意だった項目

議論 視覚 FB のデザイン間での比較の必要性 聴覚 FB 、振動 FB による焦りや恐怖心の誘発 運転熟練度で参加者を絞った実験の必要性 制約 フィードバック提示位置の妥当性 ハンドルへ直接振動を与える振動 FB の妥当性 実験環境の妥当性 アラウンドビューモニタ搭載の妥当性 限定的な状況 結果の一般化には慎重な解釈が必要 19 議論・制約

20 まとめ 背景 バック駐車時、ハンドルの回転角が分からなくなる現象 ハンドル回転角フィードバックに焦点を当てた研究の少なさ 関連研究 運転中の情報提示システム 提案 3 種類 ( 視覚 / 聴覚 / 振動 ) の回転角フィードバックシステム実装 ユーザによる駐車実験 評価 駐車時に得られる情報による定量的評価 アンケートによる定性的評価 実験 並列駐車実験 縦列駐車実験 結果 定量的評価によるフィードバック条件間の有意差はなし 視覚フィードバック及び聴覚フィードバックは心理面で有用 課題 フィードバックデザインの検討 実験運転環境・条件の妥当性

補足資料

参考文献 [Lee, 2024] Okkeun Lee et al., Designing Visual Signals to Support Situation Awareness Recovery in Conditional Automated Driving, AutomotiveUI ‘24, 2024. [Tanaka, 2017] Takahiro Tanaka et al., Driver Agent for Encouraging Safe Driving Behavior for the Elderly, HAI ’17, 2017. [Lauber, 2014] Felix Lauber et al., In-your-face, yet unseen?: improving head-stabilized warnings to reduce reaction time, CHI ’14, 2014. [Ma, 2019] Zhuoluo Ma et al., Vibrotactile Wristband for Warning and Guiding in Automated Vehicles, CHI EA ‘19, 2019. [Zhu, 2020] Yancong Zhu et al., Design Research on Vibration Tactile Feedback in Vehicle Navigation Information Application, Chinese CHI ‘20, 2020. [Mok, 2017] Brian Mok et al., Reinventing the Wheel: Transforming Steering Wheel Systems for Autonomous Vehicles, UIST ‘17, 2017. [Johns, 2017] Mishel Johns et al., Looking Ahead: Anticipatory Interfaces for Driver-Automation Collaboration, 2017 ITSC, 2017. [ Wilfinger , 2013] David Wilfinger et al., The wheels are turning: content rotation on steering wheel displays, CHI ‘13, 2013. [ Sucu , 2013] Burkay Sucu et al., Haptic interface for non-visual steering, IUI ‘13, 2013. [Vito, 2020] Patrizia Di Campli San Vito et al., Purring Wheel: Thermal and Vibrotactile Notifications on the Steering Wheel, ICMI ‘20, 2020. [ Stütz , 2017] Thomas Stütz et al., An interactive 3D health app with multimodal information representation for frozen shoulder, MobileHCI ‘17, 2017. [Tsuji, 2024] Hiyori Tsuji et al., Smartphone-Based Teaching System for Neonate Soothing Motions, 2024 SII, 2024. [ Shiraga , 2016] Shota Shiraga et al., Designing Smartphone Feedback Based on Vibration Impression, CHI EA ‘16, 2016. [Gomes, 2022] Guilherme Daniel Gomes et al., HEDGEHOG: A Steering Wheel Prototype to Continuously Enhance Driver's Situation Awareness During Conditional Vehicle Automation, AutomotiveUI ‘22, 2022. 22

各タスクの実施前に実験者が駐車を行っている映像を視聴 駐車タスクを事前に理解 本番に入る前に十分な練習時間を設定 本番とは異なる駐車パターン 各フィードバック条件が同じ回数ずつになるように駐車を練習 初期位置は自動車の切り返しが発生するような状態に調整 並列駐車タスクと縦列駐車タスクの間には十分な休憩時間を設定 23 実験条件の詳細

クリープ現象 前進時にブレーキを踏み停車した後にブレーキを離すと自動車が前進 後退時にブレーキを踏み停車した後にブレーキを離すと自動車が後退 衝突時のハンドルへの衝撃 衝突をできる限り避けるよう指示 ハンドルへ中立位置に戻るように抵抗が付加 大きさは後退時より前進時の方が大きい 24 運転条件の詳細

logicool G923 を Unity と連携 ハンドル、ペダルと同期 25 運転シミュレータ logicool G923 [5] [5] logicool G. “G923”. https://gaming.logicool.co.jp/ja-jp/products/driving/g923-trueforce-sim-racing-wheel.html ( 引用 2024-11-27)

26 アンケート項目の質問内容 受容性 フィードバックの受容性は高かったか 信頼度 フィードバックの信頼度は高かったか 気づきやすさ フィードバックは認識しやすいと感じたか 理解しやすさ フィードバックは理解しやすいと感じたか 利便性 フィードバックは駐車の補助として便利だと感じたか 正しい駐車への貢献度 フィードバックは正しい駐車の参考になると感じたか 安全運転への貢献度 フィードバックは安全運転に役立つと感じたか 不快さ フィードバックは不快に感じたか 妨害性 フィードバックは運転の妨げになると感じたか 満足度 フィードバックがないときと比べて満足度は高かったか 使いたいか フィードバックは今後も使いたいと感じたか

27 エラーバーを追加した結果

定量的指標 シャピロウィルク検定による正規性の検定 ( 有意水準は 5%) 有意差検定 正規性があった場合は一元配置分散分析 ( 有意水準は 5%) 正規性がなかった場合はフリードマン検定 ( 有意水準は 5%) 今回の場合 並列駐車の駐車時間、ハンドルの総回転角のみ一元配置分散分析 定性的指標 有意差検定 フリードマン検定 ( 有意水準は 5%) 多重比較 有意差があった場合はウィルコクソンの符号付き順位和検定 第 1 種の過誤を抑制するためボンフェローニ補正を適用 28 検定方法

29 研究 提示方法 提示領域 使用機器 目的 Tanaka, 2017 視覚・聴覚提示 ドライバーの前 モニタ・ロボット 高齢ドライバーの運転支援 Lauber, 2014 視覚提示 ドライバーの眼前 HUD, HMD ドライバーへの警告 Lee, 2024 視覚提示 ドライバーの前 モニタ ドライバーの注意回復 Ma, 2019 振動触覚提示 手首 振動提示装置 ドライバーへの警告と誘導 Zhu, 2020 振動触覚提示 手首 振動提示装置 車載ナビゲーション Wilfinger , 2013 視覚提示 ハンドル上 スマートフォン ドライバーへの情報提示 Mok, 2017 視覚提示 ハンドル上 改造ハンドル , LED ドライバーへの警告 Johns, 2017 視覚提示 ハンドル上 改造ハンドル , LED 付きハンドルカバー 自動運転車の軌道計画の 事前通知 Sucu , 2013 振動触覚提示 ハンドル上 振動提示装置 ハンドルの回転度合支援 Vito, 2020 振動触覚・ 熱触覚提示 ハンドル上 振動提示装置 , ペルチェ素子 ドライバーへの通知 本研究 視覚・聴覚 ・振動提示 ハンドル上 スマートフォン・ ハンドルコントローラ 駐車時のハンドル回転角提示 運転中の情報提示研究における本研究の位置づけ

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