シナリオプランニングは、単なる未来予測のツールではなく、「想定外」を想定することで、事業アイデアの発想力を飛躍的に高めるフレームワークです。特に新規事業の開発フェーズでは、その真価を発揮します。
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シナリオプランニングは、単なる未来予測のツールではなく、「想定外」を想定することで、事業アイデアの発想力を飛躍的に高めるフレームワークです。特に新規事業の開発フェーズでは、その真価を発揮します。
映画『シン・ゴジラ』に登場する「矢口チーム」は、著しい不確実性の中で新たな「ソリューション」である「ヤシオリ作戦」を考案するというミッションを背負った組織(チーム)として描かれます。これは、
エリック・リース氏が定義するスタートアップ
――“著しい不確実性の中で、何か新しいものを産み出すために設計された組織”――
と完全に一致します。
シナリオプランニングは、このような切羽詰まった環境下において、既存の枠にとらわれない突飛なアイデアを引き出すための思考訓練の場でもあるのです(莫大なストレスがかかると、人間の集団は、天才的なアイデアをひらめくことが証明されています。
実際の、新規事業にシナリオプランニングを生かす実践においては、「ゴジラが東京に来襲する」といった極端な前提を置いてみることが、ともすると無難なところに固まりがちなメンバーの発想を、常識的な、陳腐な思考から引きはがして「ぶっ飛ばす」鍵になります。
私がかつて遊びでやってみたワークショップの、架空の菓子チェーンを題材とした演習では、「メタバース上のみで展開する菓子店」や「リアル店舗には試食のみを並べ、デジタル上で受注生産するビジネス」など、通常の考えの枠を超えたアイデアが浮かびました。
ここで大切なのは、「未来を当てにいく」のではなく、「発想の幅を意図的に広げる」ことです。
現実には、シナリオの多くは外れます、神ならぬ人間の想定だから当たり前です。だからこそ、「どのみち初期案は大きく方向転換される」という前提で、自由に思考を展開することが推奨されます。
上の例でいうと、「メタバース上のみで展開する菓子店」が稼げるビジネスにそのままなる可能性は低いわけで、ここではその実現性、リアリティに固執せず、子供のように自由に発想をひろげることが大事なのです。iPhoneだって、天才スティーブ・ジョブズの頭から「ぽっと」出てきたわけではなく、七転八倒を繰り返して今の形になったのだから。
また、発想の際には、未来の環境要因を逆算して事業案を作るのではなく、まずは高い抽象度でSTEEPの要素を洗い出すことが肝心です。そこから、影響度と不確実性の高い要因を軸に据え、シナリオを構築していくプロセスは、まさに未来の可能性を耕す作業といえます。
新規事業におけるシナリオプランニングは、単なるツールではなく、「思考の慣性」に抗う手段であり、「常識」という見えない制約から解き放つ装置でもあるのです。
詳しくはブログ記事
https://startupscaleup.jp/2025/04/12/scenarioplanning/
をご覧ください。